老前整理のナッジ8





「トイレットペーパー1カ月分」




「これは何でしょう?」



私は講演の中で、PWPの写真とこの質問をします。

突然、訳の分からないものを見せられて、戸惑ったり、わからない人も多

いのです。

答えはトイレットペーパーの芯です。

会場の方から正解が出たら、皆さん、なーんだという感じです。







次に「お宅は1カ月にトイレットペーパーを何ロール使うかご存じです

か」
 
この質問をあちこちの講演会で1000人を超える方にしてきました。その中

で、ご存じだったのはたった3人です。私もこの結果に驚きました。



 老前整理のナッジ7の「探しものが多い」のも、ものが多すぎることに

加えて、管理の問題があります。膨大な「もの」のリストをすべて自分の

頭の中にいれて、管理をしようとするのは無理があります。

 管理の第一歩は、「日常生活で何がどれだけ必要か」をチェックするこ

とです。
 
これがわからないと、スーパーで安かったからと、食糧品などを買い込ん

で眠らせておき、気が付けば期限切れで廃棄処分にしたという経験はあり

ませんか。

 この管理を考えるきっかけと、長年気になっていた問題を解決する一石

二鳥ではないかと思いました。 

 もう1つの問題とは、在宅のケアマネージャーをしていた時に目にした

廊下に山積みのトイレットペーパーです。どうしてこんなことが起こるの

でしょう。

 これはなくなったら困るという過去の不安がそうさせるのだと思いま

す。

 1973(昭和48)年に、オイルショックをきっかけとして物資不足が懸

念されたことに過剰に反応した多くの人たちが、日本各地でトイレットペ

ーパーの買い占めに走りました。

(今は、学校の教科書に掲載されているらしいです)

 この「トイレットペーパーがなくなる」という騒動を経験した世代は、

なくなる不安があるため、常に多めに買っておかねばと思うようです。

 それに高齢者は体調の優れない日もあります。夏の暑い日は熱中症、寒

い日、雪の日は転ぶ危険など、買い物に行くのもままなりません。だから

こそ、安い時に多めに買って蓄えておこうとするのです。

 このような高齢者の心情は理解できるのですが、1カ月にどれくらいの

トイレットペーパーが必要かを考えれば、何十年使っても使いきれないほ

どのトイレットペーパーを買い込む事態にはならなかったでしょう。  

 (この場合は認知症の疑いも指摘されるかもしれませんが、それでも多

すぎます)



 私がこのようにトイレットペーパーの数を尋ねるようになったかといえ

ば、東日本大震災がきっかけです。

 大阪在住ですので、1995(平成7)年の阪神大震災で地震がどれだけの

猛威をふるうか、恐ろしさを身をもって知りました。その時の恐ろしさが

よみがえり、災害に備えることの大切さを改めて考えました。

 そこで必要なものをリストアップするうちに、トイレットペーパーのこ

とを考えました。調べてみると経済産業省が、次のような告知でトイレッ

トペーパーの備蓄をよびかけていることがわかりました。



・ご家庭でトイレットペーパーの備蓄が必要な3つの理由

1、阪神・淡路大震災において、被災者が最も困ったのは食料でも衣服で

  もなくトイレ不足。※1

2、東日本大震災では、被災地のみならず全国的にトイレットペッパー不
  
  足が発生。  ※2

3、トイレットペーパーの約40%は静岡県で生産。東海地震等が起こる

  と深刻な供給不足になる。※3



 ※1「帰宅行動シュミレーション結果等に基づくトイレ供給等に関す

   る試算について」平成20年10月内閣府

 ※2「東日本大震災におけるガソリン・物流の課題」関谷直也
 
  (東洋大学社会学部)

 ※3「トイレットペーパー供給継続計画」平成24年11月 日本家庭 

   紙工業会は備蓄に関して、経済産業省では日常用のトイレットペー
 
 パーとは別に、1か月分余分にトイレットペーパーを備蓄することをす

すめています。この資料を前にして私は考えました。
 



  まずトイレットペーパーはどこの家庭にもある必需品で、数を数えや

すいこと。備蓄チェックの手始めには最適ではないかと思いました。

ところが1カ月分のトイレットペーパーの使用量は各家庭により違いま

す。

 水なら一人1日3リットルが目安とされています。ところがトイレット

ペーパーはそう簡単に計算できないのです。

 まず、家族の人数、男女、大小便の回数にそれぞれ差がある。家にいる

時間の違い。また紙自体の問題もあります。
 
市販の家庭用はシングルとダブルにより一巻きのメーター数が違う。家庭

用のシングルでは60メートルが多いのですが、業務用などでは100〜

200メートルくらいの芯なしの長巻というのを使っています。  

 最近家庭でもこのような芯なしの100メートルくらいの長巻が増えてい

るようです。そうするとますます複雑です。一概に1カ月何ロールと想定

できないのです。(と私は思いました) 

 だからこそ、一カ月の使用量はどれくらいか知りたいと思い、講演のた

びにお尋ねしたのですが、数を把握しておられたのは1000人余りでやっと

3人です。

 ではどのようにしてトイレットペーパーを買っておられますかと尋ねる

と「安売りの時にまとめ買い」断然これが多いのです。





 そこでまずここからだなと思いました。 手始めに1週間のトイレット

ペーパーの使用量を調べてもらうこと。これを4倍にすればおおよその見

当がつきます。
 
 こうして1ヶ月におよそどれくらいのトイレットペーパーを使用するか

がわかれば、必要な備蓄の量も決まります。備蓄品は多すぎても無駄にな

るし、足りなければいざという時に困ります。

 備蓄に関してこれで終わったわけではありません。ここがスタート地点

です。

 緊急時の持ち出し品を用意されている方も多いと思いますが、今一度、

水や食料などの消費期限の確認をしてみませんか。

 ついこの間買ったばかりだと思っていたのに、1年以上たっていたとい

うことはよくあります。懐中電灯の電池のチェックも必要ですね。できれ

ばここに現在飲んでいる薬も入れておいてください。

 急に避難勧告が出た時に、薬は忘れがちですが、これは命に関わる場合

もあります。

 期限が切れないようにチェックしながら最低5日分の薬を入れておくと

安心かもしれません。



 災害の備えが終われば、次の段階で、日常生活に必要なものも1カ月に

どれくらい必要か、調べてみることです。こうして管理をして、わかりや

すく取り出しやすいように納めておくことです。

 次に食品庫の乾物や保存食品の消費期限を確かめてみてください。どこ

にでもありそうな缶詰や素麺など期限が切れていませんか。



 Sさんのお宅では押し入れの奥から消費期限が8年以上前のカニの缶詰

が3つも出てきました。いくらなんでもこれは食べられませんし、それこ

そもったいないですね。

しまいこんでしまうとどうしても忘れてしまいます。定期的にチェック

して、消費期限が近ければ目につくところに出しておいて使いましょう。

 講演でこのようにトイレットペーパーの話をしております。

ところで、お宅では1か月にトイレットペーパーを何ロール使っているか

ご存知ですか?

『老前整理の極意』より
  




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