老前整理のナッジ5





【どうすればうまくいくか】




老前整理に成功するために



 老前整理には鉄則と名付けたルールが5つあります。

これはこうしなければいけないということではありませんが、これを守っ

た方が成功率が高くなりますよということです。

まず5つをまとめて紹介し、その後、それぞれについてご説明します。



1、一度に片づけようとしない

 一度に片づけようとしないことが大事なのは、簡単に言えば一度に片づ

けると疲れるからです。

 張り切って片づけて、翌日寝込んでしまっては元も子もありません。ま

た腰を痛めたりすると取り返しがつきません。片付けるというのは体も使

いますが、それよりもっと大きいのは精神的な疲れです。

 ものの整理、つまりこれからの暮らしに必要かどうかを判断し、決断し

ていくのにはエネルギーが必要です。

 片づけは簡単そうに思えるかもしれませんが、実は想像以上に疲れま

す。だから一度にしないのです。

 また、疲れて集中力が切れてしまい、これも捨てればよいだろうと箱の

中や袋の中を確かめずに処分して、へそくりや必要な書類まで捨ててしま

い、後悔するようでは困ります。

 老前整理をはじめる人の年代は五〇代から八〇代までいらっしゃいま

す。

 半世紀以上も生きてこられた方ばかりです。当然、持ちものも若い人と

違い、何十年という歴史があるものを持っておられますので、思い出がつ

まったものもたくさんあります。

 一つひとつのものに向き合うということは、そのときの自分に向き合う

ことでもあります。

 自分に興味のないものや、人のものは簡単に捨てろと言えるものです。

 なぜなら、他人のものにはこのような「思い出」や「想い」がありませ

ん。単に使えるかどうか、見た目などで判断できるのです。
 
このようにものと向き合っていくことは、自分自身の行動を振り返ること

でもあります。

 片付けなければならないものが多いということは、余分なものを買った

りもらったということでもあり、なかなかプラスには考えられません。だ

から疲れるのです。

 体の疲れももちろんですが、この精神的な疲労がとても大きいので、一

度に片づけようとしないことが鉄則になるのです。

 短距離走のようにスピードを追求するのではなく、マラソンのようにゴ

ールまでマイペースで完走するとをぜひ目標にしてください。



2、最初から完璧を目指さない

 最初から完璧であることを目指さないのは、はじめから完璧を目指すと

前に進めなくなるからです。

 たとえば、近所の公園の掃除をしなければならなくなったとします。こ

のときに、虫眼鏡で地面を見ながらピンセットでゴミを拾っていたらどう

でしょう。

 大きなゴミを拾ってざっとほうきで掃いていく方がいいですよね。

 極端だと思われるかもしれませんが、これと似たようなことを実はしが

ちです。

 これでは前に進めず、いつまでたっても終わりません。

 目的を忘れてはいけません。ここでは公園を気持ちよく使うために掃除

をするのであって、隅から隅までちりひとつないように掃除をすることが

目的ではありませんね。

 老前整理を完璧にやろうとせず、ほどほどにすることがお勧めです。

 頑張りすぎて疲れてやる気をなくしてすぐにやめてしまうよりは、おお

まかでも一か月続ける方がいいことはすぐにおわかりになるでしょう。

 三日坊主になってしまうのは、最初から頑張り過ぎるからではないでし

ょうか。

「あともう少しやりたいな」と思えるくらいが、ちょうどいいのかもしれ

ません。とにかく無理をしない。続けることが目標です。

 この「無理をしない」という言葉について、NHK学園通信教育「やって

みよう老前整理」の受講者の方から、この言葉で救われたというお声をた

くさん聞き、驚きました。

それだけ多くの方が「片付けなくては」や「早くきちんとしなくては」と

いうプレッシャーを抱えておられたのだと思いました。 


                                 3、家族のものには手を出さない

 家族のものには手を出さない。これはトラブルのもとになることはあっ

ても、よいことは一つもないからです。ひどいときには離婚にまで至るこ

とがあります。

 よくあるトラブルは、妻は夫の趣味のもの、蔵書やコレクションについ

て、場所を取るから何とかしてほしいと思っているのに、夫はなぜ片づけ

ないといけないのかわからないという場合です。

 夫はいつまでも好きなものに囲まれて暮らしたい、コレクションが生き

がいでもあります。だから減らすなんてとんでもない。まだまだこれから

欲しいものや買いたいものがたくさんあるのです。

 また、自分のものを他人が勝手に処分したら腹が立つでしょう。たとえ

それが、自分でも捨てようかと思っていたガラクタでもです。だからこ

そ、自分のものは自分で処分することが必要なのです。

 今までの経験から、老前整理を考える年齢にも男女差が見受けられま

す。
 女性は早い方で50代から考えはじめます。これは夫の定年を数年後にひ

かえ、次の暮らし方を考えはじめるからでしょう。

 家の中のものに対する男女の違いもあります。

 多くの女性は家事をしますので、自分の家の中の押入れや納戸などに、

どれくらいたくさんのものがあるかを知っています。しかし長年仕事に追

われ、家の中のことにかかわることのなかった男性はこのことを知りませ

ん。

 まずこの知識において男女差があります。これは問題意識の差ともいえ

るでしょう。このギャップがすれ違いやトラブルのもとになるのです。

 まずは家族のものよりも自分のものを片づけましょう。それが先決で

す。



4、片づけ前に収納用具を購入しない

 「さあ、片づけよう」と思い立った人は、張り切って通信販売やホーム

センターのチラシで収納用具を注文されることがよくありますね。

 でも、片づける前から収納用具を購入してはいけません。もちろん、そ

れ自体が悪いというわけではありません。

 片づける前、ものを減らす前にものを入れる器を買ってしまうと、本来

捨てるべきものを収納して「さあ片づいたぞ」と安心してしまうからで

す。
 目に見えないところに移動させただけであって、これでは整理にはなっ

ていません。

 収納用具の購入を繰り返しても、ものはどんどん増えるばかりです。も

のが増えるとどこに何があるのか管理もできず、使いたいときに使えませ

ん。

 必要なものが見つからないから、新しいものをまた買うという悪循環に

陥ってしまいます。

 広いお宅ほどものを置くスペースがあるので、また新しい収納用具を買

って、納戸にしまい込むということが多いようです。

 もちろん収納用具を買うなということではなく、ものを減らしたうえで

「○○を入れたいから、このスペースに置ける大きさの収納用具を買お

う」など、目的に合った収納用具を購入していただきたいのです。

 よくある失敗は、ものが増えたからと収納用具をカタログで注文したも

のの、いざ商品が届くと大きすぎて置こうと思ったスペースに置けない、

入れるつもりのものが入らないなどです。

 その場の間に合わせではなく、目的と置く場所やモノの寸法を測り、適

切な収納用具も選んでいただきたいものです。



5、「使える」と「使う」は違う

「使える」と「使う」はどう違うのでしょうか。家の中のほとんどのもの

は「まだ使える」という理由で保管されています。

 洋服なら「まだ着られる」ですね。これには「もったいない」や「高か

った」という気持ちがあります。

 でも洋服がたくさんあればおしゃれになれるとは限らない。これも日頃

の老前整理の講演で皆さんにお話していることです。

 もったいない、まだ着られると洋服を眠らせておいても、実際のところ

そのほとんどはもう着ない、着られないものです。

 かった洋服を、まだ二回しか着ていないからとタンスに眠らせておい

ても、それこそタンスの肥やしにしかなりません。

 まずはその洋服を着て鏡の前に立ってみましょう。もしサイズがぴった

りでまだ着られるのならば、タンスにしまいこまずに元を取るくらい着ま

しょう。

 スーパーへの買い物にだって着て行ってもいいわけです。元を取るぐら

いまで着て、納得できたら手放しましょう。つまり洋服も「着られる」で

なく「着る」かどうかで判断します。

 元を取ったと思ったらいさぎよく手放すのがポイントです。そうでない

と着ない洋服で衣裳ケースやタンスがいっぱいになります。

 高い洋服よりも、今の自分に似合うものを身に着けた方が輝けると思い

ませんか。素敵に見えると思いませんか。これからはぜひ量より質で洋服

を選んでください。



 洋服の次は「まだ使える」で残している日用品はどうでしょう。

 電気製品を修理をすれば「まだ使える」という理由で残してあるなら

ば、すぐ修理しましょう。

 電化製品は何年も経つとメーカーに修理するための部品がなくなってし

まいます。また長い間使われずに放置された電気製品は後々トラブルを引

き起こす危険もあります。

 また、存在さえも忘れられているものが家の中にはたくさん眠っている

可能性もあります。10年20年とそのまま眠ったままかもしれません。

 使えるものは「今」使いましょう。使わないものは手放していきましょ

う。

 何十年も使わなかったものに、「これから使う」という機会はほとんど

ありません。こう考えると切り替えることができるのではないでしょう

か。

 この「使う」と「使わない」がポイントだということはわかっていただ

けましたか。

 このように5つの鉄則を知っていると挫折や失敗が減り、老前整理の成

功率がくなります。

『心と暮らしを軽くする『老前整理』入門』 『老前整理』

『老前整理実践ノート』より





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