[行動経済学と老前整理5−1]
[無料に弱い?]
無料がいかに強力か
行動経済学者のダン・アリエリーが実験を行いました。
(ダン・アリエリー『予想通り不合理』ハヤカワ・ノンフィクション文
庫より)
実験のためにアリエリーは二人の仲間と共に、チョコレートの販売を始め
ました。(まずここから、親近感を覚えるでしょう?)
とてもおいしいリンツというメーカーのひとつ30セントのトリュフの高
級チョコレートと、袋にたくさん入っているハーシーのキスチョコの2種
類を用意し、「おひとり様ひとつまで」の張り紙を掲げ、近寄ると値段も
目に入るようにしました。
トリュフを15セント、キスチョコを1セントとして販売したところ73%
の人がトリュフ、27%がミニチョコを選びました。
次に、トリュフを14セント、キスチョコを無料で提供するとどうなったで
しょう。
どちらも1セントずつ安くなっただけなのに、69%の人が無料のキスチョ
コを選びました。トリュフの人気は73%から31%に減りました。
トリュフが15セントの時には、通常の価格30セントに比べて半額にな
ったことがお得に感じる。しかし、キスチョコが無料になると69%が無料
に飛びついてしまう。トリュフは先ほどの半額よりも、さらに1セント安
くなったにもかかわらずです。
この反応の違いをどう思いますか。
身近なことで「無料」だからと、必要のないものにまで手を出していま
せんか。
この実験の話で、行動経済学のイメージが変わりませんか。
私は、行動経済学が机上の学問ではなく、生活の中で気づきが得られる
面白い考え方で、ひいては社会を変えるかもしれない可能性を含んでいる
と思っています。
『老前整理の極意』より、写真はこの本文中のイラストです。
わかりやすいイラストを描いてくださったのはイラストレーターの西村亜
由美氏です。
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