[行動経済学と老前整理6]





【ナッジ(nudge)をどうとらえるか】

 



ナッジで道が開けた

 ナッジは聞きなれない言葉かもしれません。今日は老前整理とナッジの

話です。

 行動経済学の本を読んで、自分がそれまで抱えていた疑問の答えがある

ように思い、喜んだのもつかの間です。学んだことをどうすればよいの

か、老前整理にどのように生かせばよいのか、先が見えなくなっていた時

のことです。

 およそ2年前の2016年8月4日に出張で上京していました。たまたま30

分ほどの時間つぶしのつもりで入った東京駅の近くの大型書店にキーパー

ソンの3人目の男、リチャード・セイラ―の『行動経済学の逆襲』(早川書

房)が並んでいました。

 手にとってぱらぱら見ると内容は、価値関数や確率加重関数といった難

しい話が主ではなく、セイラーがなぜ行動経済学を選んだか、また行動経

済学を選び取るまでの失敗談や、経済学者などから嘲笑された話など悲喜

こもごもが書かれてあり、これは買わねばと思いました。



 この日、仕事を終えて帰りの新幹線の中で読み始めました。

 この日まで知らなかった、行動経済学がどのようにして生まれ、発展し

てきたのかがよくわかりました。セイラーはプロスペクト理論や自らの研

究結果を使って、世界をよりよくするために何ができるかを次のように考

えていました。

「選択をする人が、自分にとってより良い結果になるであろう決定を、選

択者自身の判断に基づいてするように影響を与えたい」

 つまり押し付けるのではなく、人々が自分の目標を達成するお手伝いを

することをナッジと呼んでいます。ナッジと言えばもとは「ひじで軽くつ

つく」という意味です。

 老前整理も「あれをしなさい、これをしなさい」でなく、自分で考え、

納得して行動することが大切だと思ってきました。

 ここで私のするべきことは、みなさんの老前整理をナッジすることだと

わかりました。たぶん、私が新しい一歩を踏み出せたのは、この本のおか

げだと思います。



 セイラーが『行動経済学の逆襲』で紹介していたナッジの例は、アムス

テルダム・スキポール空港の男性用トイレを挙げています。

 このケースでは利用者の注意をある特定の方向に向かせると、力を発揮

するようなケースです。経済うんぬんの難しい話でなく、非常にわかりや

すいと思います。
 
 空港の小便器に黒いハエの絵が描かれている。それだけのことです。男

性が用を足す時に的があると注意力が高まり、周囲への飛び散りが減る。

スタッフがハエ実験を行った結果、飛沫の汚れが80%も減ることが明らか

になったそうです。これで掃除の手間、ひいては人件費にどれほど影響す

るか考えてみてください。  『老前整理の極意』より

(スキポール空港、ハエ、で検索すると写真がたくさん出てきます)



 ほとんどの人はスキポール空港まで行けないし、行っても女性は男子ト

イレに入れない。悔しい。

 老前整理には関係ないけれど、これは使えるのではないかと思いまし

た。


例えば、幼稚園などの子ども用の小便器や高齢者が多く使用する施設の小

便器はどうでしょう。

そこで、私もいたずら心を起こし、ある施設の方にお願いして子ども用の

小便器に的のシールを張ってみました。

(子ども用は女性用トイレの中にあります)

   (c)くらしかる

 この時に、どのあたりに貼ればよいのか悩みましたが、適当です。

 実際に実験していただければよいのですが、ご迷惑をかけてもいけない

ので、すぐはがしました。的の大きさは1円玉くらいです。

 (c)くらしかる

 白いシールに渦巻きを書いて(ハエでもゴキブリの絵でもよいです)

張るだけで、特別なことをする必要はありませんので、実験できる方は実

験してみてください。お掃除が楽になるかもしれません。  

ナッジについて、なんとなくおもしろそうだと興味を持って思っていただ

けましたか。 
   




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