[行動経済学と老前整理8]
【老前整理の鉄則を行動経済学からみると】
老前整理の鉄則として2010年の講座を始めた時からこの鉄則の話をして
きました。
行動経済学からみた老前整理の五つの鉄則です。
1、一度に片付けようとしない
これは体力的な問題もあるので、無理をしない方がよいこと。また頭の
整理、心の整理をする時間も必要なので、急がずマイペースの勧めです。
よくある失敗は、押し入れの中のものや洋服ダンスの中のものをすべて
出してはみたものの、どうすればよいかわからなくなり途方に暮れること
です。
目の前に服の山があり茫然としている。これは「選択麻痺」に陥ってい
るともいえます。
選択肢が多すぎてどれを選べばよいのか判断がつかなくなり、決定を先
送りします。
2、最初から完璧を目指さない
これは行動経済学でいう「確実性効果」で説明しましょう。
確実性効果とは客観的確率が100%の近くで、主観的確率が客観的確率
を大きく下回るので、100%にするために大きな努力がはらわれることを
いいます。
テニスの試合で考えてみます。
たとえばあなたがテニスの選手でサーブが入る確率が65%と66%ではそ
れほど違うとは思わないでしょう。しかし確率99%を100%にするにはど
れほど練習が必要でしょう。
同じ1%の差ですが、感じ方が全く違います。
つまり完璧を目指すということは99%では満足せず、100%を目指すと
いうことなのです。 そして厳しい道だから挫折しやすいのです。老前整
理では100%を目指さず、65%でも続けることが大切なのです。
3、家族のものには手を出さない
これは「フォールス・コンセンサス効果」(総意誤認効果)で説明できま
す。効果は自分と他者の間に共有されているコンセンサス(合意性)を過
度に見積もる認知的バイアスのことです。
4、片付け前に収納用具を購入しない
これは行動経済学で「現在志向バイアス」と呼ばれるものに当てはまるで
しょう。つまり将来的な事を考えずに、目先のことを簡単に解決しようと
しているのです。
5、使えると使うは違う
これはまだ使えるとものを保管しておくのでなく、使うかどうかで判断
することです。この使えると使うをやはり行動経済学の「サンクコスト」
に当てはめてみましょう。
サンクコストは埋没費用と訳され、すでに支払ってしまった費用や時間
のことです。これはすでに支払ってしまったお金のことが頭にあるため
に、冷静に考えれば選ばないような選択をすることです。
このように5つの鉄則も行動経済学で説明が付きます。なぜ不合理な行動
をするのか、理由があるのです。 (『老前整理の極意』より)
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